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医療界が信頼を失墜する危機です!

こんなことになっていること、殆ど知られていません。
医療への信頼が失墜する議論の展開。
強く危惧を抱いて記事にまとめました。
何度か投稿している医療事故制度についてです。
ぜひ、ぜひ、お読みkください!!

http://gooday.nikkei.co.jp/atcl/column/14/091100014/012900006/

(記事全文)

COMLでは日常の活動の柱として、これまでに5万4000件を超える電話相談に耳を傾けてきました。その中には「受けた医療の結果に納得がいかない」というご相談も少なくありません。

医療側からの説明に納得できず、「なぜこんな結果になったのか」という原因を知りたい場合は、受けた医療内容を検証する必要があります。具体的に言うと、カルテ開示や証拠保全という手段を使って医療記録を入手し、第三者の専門家(「協力医」と呼ばれます)の意見を聞くことになるのですが、そのためには、親戚や友人に協力医となってくれる人がいない限り、弁護士を介するしかありません。経済的な負担も生じますから、患者側にとっては、とてもハードルが高いのが現状です。

今年10月に医療事故調査制度がスタート
医療事故の問題がクローズアップされた約10年前から、第三者機関―いわゆる「医療版事故調」が必要という議論が湧きあがっていました。厚生労働省でも、2003年頃に検討部会ができて議論が始まりました。

その後しばらく、議論が棚上げになった時期もありましたが、2012年2月に「医療事故に係る調査の仕組み等に関する検討部会」が設けられ、議論が再開しました(私も検討部会の委員の一人)。検討部会における13回の議論の末、2013年5月29日に「医療事故に係る調査の仕組み等に関する基本的なあり方」がまとめられました。この「基本的なあり方」は、同年12月の社会保障審議会医療部会でも承認され、第六次医療法改正(2014年)にも盛り込まれました。そしていよいよ、新たな「医療事故調査制度」が、今年10月にスタートすることになっています。

2年前の「基本的なあり方」で示された方向性
「基本的なあり方」で述べられている医療事故調査は、おおまかにいうと以下のようなものです。まず、医療機関で診療行為に関連する予期せぬ死亡事故が起きたら、遺族に十分説明し、第三者機関に届け出るとともに、速やかに院内で調査を行って、結果を第三者機関に報告します。院内調査の報告書は、遺族にも十分説明した上で開示されます。さらに、院内調査の実施状況や結果に納得が得られなかった場合などは、遺族や医療機関からの依頼で第三者機関自身が調査を行うこともあります(下図)。

 このような内容について私は、医療関係者からの「自浄作用を働かせるべき」という姿勢が感じられ、紆余曲折はあったものの、時代の変化と成熟の機運を嬉しく感じたものでした。医療法の改正を受けて、より具体的なガイドラインの作成が急務となり、「診療行為に関連した死亡の調査の手法に関する研究」班(以下、研究班)が立ち上がりました。この問題に関連する医療関係団体や被害者の立場、そして私も協力研究者として約30名のメンバーで話し合いを進めてきました。

 ですが、ここでの議論は紛糾し、なかなかまとまりませんでした。そして、2014年11月に、厚生労働省に「医療事故調査制度の施行に係る検討会」(以下、検討会)が別途設けられるに至りました。私はある事情があり、この検討会のメンバーには加わることができませんでした。現在も研究班の班会議は検討会と並行して行われ、まとめられた内容は、随時、検討会に報告されています。

「遺族に開示すべきではない」「法律家の参加は必要ない」
ところがここに至って、「基本的なあり方」から後退し、10数年前の医療界に引き戻るような主張がぶり返し、私は歯がゆいほどの強い危惧を抱いています。

こうした主張をするのは、2014年10月に独自のガイドラインをまとめた医療法人協会(以下、医法協)という団体とガイドライン作成メンバー、その関係者の方たちです。医法協ガイドライン推進者は、

「単純ミスは調査対象にする必要がない(*1)」
「院内調査報告書は作成する必要はない(*2)」
「院内調査報告書は遺族に開示すべきではない(*3)」
「再発防止策は院内調査報告書に記載しない(*4)」

【編集部注】*1)十分“予期”し得ると考えられるため *2)医療版事故調は医療安全を目的とするもので、法律上も作成を求める文言はないため *3)医療安全確保のためのものが責任追及の目的で使用されることが想定されるため *4)常設の院内医療安全委員会で検討すべき事項であるため

といった主張を繰り返しています。

 医法協ガイドラインを細かく見ても、院内調査については、「原則として医療事故の生じた医療機関で調査を完結できるよう努力し、安易に外部の専門家に丸ごと依頼しないこと」「紛争化・責任追及を招き有害なので、法律家の参加は必要ない」など、「基本的なあり方」から大きく外れる内容ばかりなのです。また、検討会に提出された報告書には、「妊婦健診では全く医療行為を行っていないので(中略)妊婦健診で通院している妊婦については、死産が発生しても『医療事故』ではない」といった記述さえ見られます。

 ところが、厚労省の検討会ではこの医法協ガイドラインが議論の主要な資料の一つとして位置づけられ、「報告書は開示すべき」「院内調査の結果、再発防止策が考えられるのであれば記載すべき」と異を唱える委員には、医法協ガイドライン推進派委員が徹底的に反論し、ネットや雑誌などで名指しで非難を繰り返すというひどい展開になっています。

 そしてとうとう、医法協ガイドライン 推進派の意見を反映し、厚労省作成の資料の中に、「遺族への説明については、口頭(説明内容をカルテに記載)又は書面(報告書又は説明の資料)の適切な方法を管理者が判断する」という書面での説明が“任意”になる通知(案)が出るに至ってしまいました。

遺族が理解、納得できる事故調査を
 繰り返しますが、「基本的なあり方」では、院内調査報告書は開示すべきと明記されていたのです。それすらないがしろにするということが、許されていいはずがありません。

 そもそも、医療という専門性の高い内容について調査された内容を、口頭のみで理解せよということ自体、多くの遺族にとっては困難です。それに、口頭だけだと思い込んだり、誤った解釈をしたりして、それが独り歩きすると、紛争へとつながる可能性は大きく、それは医療者にとってもプラスに働くとは思えません。

 やはり、本来はきちんと報告書を提示しながら、できるだけわかりやすく丁寧な説明があり、帰宅後に落ち着いて改めて読み直し、再度質問する場が提供される。そのような真摯な対応があって、はじめて遺族の理解、納得に至るのではないでしょうか。それが医療への信頼を築く対応ではないかと思うのです。

 それなのに、報告書を作成しない、あるいは開示しないとなれば、また患者側の医療不信が再燃するのではないかと懸念しています。

医療訴訟に“訴えざるを得なかった”理由
 私は、医療事故調査では、制度の“肝”でもある院内調査のあり方が非常に重要だと思っています。これまで弁護士を介して協力医の意見を聞くしかなかったのが、原則として外部委員を入れて複数の専門家が調査し、議論して結果をまとめることになったのですから、より客観的な検証につながることが期待できます。

 それを丁寧にわかりやすく報告し、遺族の疑問に応えれば、紛争化することは増えるというよりむしろ減るのではないかと、私は確信に近い思いを持っています。弁護士に依頼したり、医療訴訟に訴えたりする人たちの多くは「ほかに方法がないからその手段を選ぶしかなかった」からだ、と長年の電話相談の経験で私自身実感しているからです。

 1999年の横浜市立大病院事件、都立広尾病院事件を境に高まった医療不信がようやく落ち着き、さらに成熟した医療を目指すためには、透明性と中立性の担保が何よりも必要です。ここで再び患者側の医療への信頼を失墜させることが起きないよう、前向きな制度にしていく必要があると強く願っています。私自身、研究班の班会議やこの問題に関する研修会などで精一杯の発言の努力はしていますが、現在起きているこのような現状は多くの人に知られていません。しかし、時間がないのです。何とかおかしな方向への動きを阻止したい―焦燥すら感じる昨今。

 この記事を読んで、読者の皆さんはどう思われますか? 私と思いを同じくする方々、声を上げていきませんか?

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